原民喜《原爆回想》日文原版
ロポンを五粒飲んでおいた。
上流から玉葱の函が流れて来た。鉄橋の上で転覆した貨車から放り出されたものである。私は水際へおりて行って、函を引よせては、中の玉葱を岸の上の人に手渡した。夕方になると、こちらの岸が燃えだしたので、火の鎮まっている向岸の砂原に私たちは移って行った。ここでは、もう焚火をして夕餉の米を煮いているものもあった。私の拾った玉葱も、瓦の上で焼いて食べられた。私の雑嚢のなかの品物がここでも役立った。腕を怪我している近所の老人の手当に、私はメンソレータムや繃帯をとり出した。
次兄の家の女中は顔にひどく火傷していたが、私はその姿を見ると、オリ ブ油の瓶を雑嚢に入れておかなかったのが残念だった。前から私はオリ ブ油の小瓶をいつも上衣のポケットに入れていた。上衣はその朝拾えたのだが、瓶はあの瞬間どこかへ飛んでしまったのだろう。
私たちはその翌日、東照宮の境内に避難して行つた。妹は私がズルフ ミン剤をもっていることを知ると、それを今服用しておいた方がいいのではないかと頻りにすすめる。そこで、私たちは念のためにそれを飲んでおいた。これも後になって考えてみると、原子爆弾症の予防になったのかもしれないようだ。
私たちはその日の夕刻頃には、みんなもう精魂つきて、へとへとになっていた。私はオートミ ルの缶をあけて、それを妹に焚かせて、みんなに一杯ずつ配らせた。すると次兄は、「ああ、こんなにおいしいものが世の中にあるのか」と長嘆息した。このミルクと砂糖の混っているオートミ ルの缶は、用意のいい亡妻がずっと以前に買って非常用にとっておいた秘蔵の品である。この宝が衰えきった六人の人間を一とき慰めてくれたのである。
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底本:「日本の原爆文学1」ほるぷ出版
1983(昭和58)年8月1日初版第一刷発行
入力:ジェラスガ
校正:大野晋
2002年9月20日作成
2003年5月21日修正
青空文庫作成フ ル:
このフ ルは、 ンターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランテ の皆さんです。
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